ミネラル豊富な食品の情報ページ

「リン酸塩」って何だろう?

さまざまな食品に添加物として使用されるリン酸塩。
毒性はほとんどないものの、ミネラルの吸収を阻害するので、
加工食品を選ぶ際には、できるだけ避けたい添加物です。


【リン酸とリン酸塩】

リン酸塩というと、「コーラに入ってる添加物でしょ?」
という方が多いのですが、コカコーラにリン酸塩は入っていません。
入っているのは酸味料です。ペプシコーラも同様です。

「この酸味料がリン酸塩でしょ?」と言われますが、違います。
酸味料に含まれるのはリン酸です。
「酸味料」と書いてあれば絶対にリン酸を含むかというと、絶対ではないです。可能性があるというだけ。
でも、リン酸塩は含みません。そういうルールなんです。

もしリン酸塩を使用した炭酸飲料があったら、酸味料という表示とは別にリン酸塩と書いてあります。
たとえばこちら

【リンは添加物だけじゃない】

栄養学のなどでは、
「リンの摂り過ぎは、骨のカルシウムを減少させる」
「リンとカルシウムの摂取バランスは1:1が望ましい」
という記述があります。

添加物として「リン酸」や「リン酸塩」を過剰に摂ると、骨から血液中にカルシウムが溶出してしまうから気をつけましょう、ということなんです。

でも、添加物由来のリンをいくら減らしても、それほど食事中のリンを減らせないのも事実。
なぜかというと、どんな食品を食べても、リンがたっぷり含まれているからです。
だから、リンを減らすことよりも、カルシウムをたっぷり摂ることを心がけるべきだと思います。

食品100g中の、カルシウム:リンは、
小松菜 → 170:45
水菜 → 210:64
わかめ → 100:36
木綿豆腐→ 120:110
牛乳 → 110:93
煮干し → 2200:1500
うどん → 18:49
白ご飯 → 3:34
牛肉もも→ 4:180
豚肉かた→ 4:200
(単位:mg)

肉ばかり食べていると、カルシウム不足になりますね。

【正リン酸塩は気にしなくていい】

食材由来のリンがそんなに多いなら、添加物のリン酸塩を避けても、避ける意味がないのでは?
と思いますよね。

もう一度、リン酸塩について考えてみます。
まず、「リン酸」に、ナトリウムやカルシウムなどが結合したもの→これが「リン酸塩」です。
リン酸塩には、大きく分けて2種類あります。

ひとつは、
リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸三カルシウム・・・などで、
これらを「正リン酸塩(オルトリン酸塩)」といいます。

もうひとつが、
ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム・・・などで、
これらを「重合リン酸塩(縮合リン酸塩)」といいます。
頭に、ピロ・ポリ・メタが付いてるやつです。

正リン酸塩は、食材に含まれるリンと同じタイプで、成分分析をしたときに、食材由来のリンなのか、添加物由来のリンなのか、区別ができません。

この正リン酸塩でも、添加物からの摂取が加われば、カルシウムとの摂取比率を悪くして、骨のカルシウムを減少させますから、避けた方が無難です。無難なんですが、肉をたくさん食べたら意味がありません。ですから、あまり神経質にならなくていいかのなと思います。

【吸収されない重合リン酸塩】

ピロリン酸四ナトリウム、ポリリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウムなどの重合リン酸塩。
いろいろな加工食品の添加物として使用されています。

この重合リン酸塩を口から摂取すると、ほとんどそのまま腸管から吸収されずに、ウンチと一緒に排泄されます。
(一部は分解して吸収されますが)
だから、ほとんど無害とされているんです。

正リン酸塩のように、吸収されてリンの摂取量が増えて骨のカルシウムが減る・・・という心配もないわけです。

ところが、単にカラダを素通りするだけなら何の問題もないのですが、ミネラルと結合して出ていくんです。
これが問題で、毒はないけど弊害があるというわけです。

たとえば、メタリン酸ナトリウム入りの食品を食べます。
胃はpHが低いから、メタリン酸はナトリウムを手放します。
腸はpHが中性近くなので、再びミネラルと結合します。
このとき、もう一度ナトリウムと再結合してくれればいいのに、他の食材に含まれていたマグネシウムや鉄や銅などと結合したりすると大変。
吸収できたはずのミネラルがメタリン酸に奪われて、ウンチと一緒に体外に連れ去られてしまうわけです。

少しぐらい奪われても影響ないだろう? と思うでしょうが、そうでもないんです。

【重合リン酸塩製剤】

重合リン酸塩メーカーの資料によると、リン酸塩は、食肉製品、水産加工品、乳製品、農産加工品、飲料等の各種食品の品質改良剤として広く利用されているとのこと。
色調改善、乳化、分散、弾力性、保水性など、添加したときの効果は絶大です。

例えば、なぜ色調改善できるのかというと、食品中のミネラルが酸素と結合して変色する前に、重合リン酸塩につかまえてもらえば、食品の色が長期間安定するというわけです。

カルシウムをつかまえるならメタリン酸!
マグネシウムをつかまえるならピロリン酸! など、
ピロ・ポリ・メタそれぞれで、結合しやすいミネラルが異なるようです。
また、pHによっても結合しやすさが変わるし、カリウム、ナトリウムなどの違いもあるようです。

だから、製剤の成分を見ても「ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、メタリン酸カリウム、ピロリン酸カリウム」のように、多種類が混合され、あらゆる食品に対応できるようになっているわけです。製剤の種類も多いですね。原材料表示では「リン酸塩(Na、K)」だけだったり、表示されないことも多いです。

重合リン酸塩は、毒性が低いから使用制限がないし、比較的安価だから、たっぷり使えるのが特徴。
食品に添加されている種類と量は、想像以上かもしれませんね。

【重合リン酸塩が奪うもの】

加工食品は、カロリー(タンパク質・炭水化物・脂肪)は充分なのに、ビタミンやミネラルといった微量栄養素の
含有量が極端に少ないというのが特徴です。
国の基準に、全然届きません。(参考資料

ミネラルが少ない理由はいろいろあるようですが、水煮処理と精製加工が原因のようです。
家庭で素材から手作りしたものと比べると、カロリーが多く、ビタミン・ミネラルが少ない。
これが外食、これがスーパーの総菜です。

その少ないミネラルの吸収を阻害する重合リン酸塩。

重合リン酸塩に奪われるミネラルが、カルシウムやマグネシウムだったら、そんなに問題ないんです。
なぜなら、いくら食品中の含有量が減っているとはいえ、重合リン酸塩に奪われてゼロになることはないから。

困るのが、もともと食品に極微量しか入ってない必須ミネラルで、例えばモリブデンとかマンガンとか
コバルトとかクロムとか・・・そういうミネラル。

これらが腸内で重合リン酸塩と結合してしまったら、ほとんど吸収されません。
「必須」ミネラルだから、吸収量が極端に減り続ければ、いずれ何らかの「病気」の症状が現れます。
特に、精神症状が心配です。

【DNAと酵素】

遺伝情報はDNAの塩基配列にコードされています。具体的には、塩基配列がタンパク質のアミノ酸配列に
対応しています。

DNAは生物の設計図なのに、アミノ酸の種類と順番しか書いてないのって、考えてみたら、ずいぶんシンプルですよね。

いろんなアミノ酸が連結したものがタンパク質で、生物の重要な構成成分のひとつです。
このタンパク質からできているのが酵素で、生体内のさまざまな化学反応に関与しています。

DNAが設計図なら、酵素は組み立て工具ですね。

さて、DNAの情報をもとにタンパク質が作られ、それが「酵素」となって、生体内で化学反応の“工具”になるのですが、それだけでは十分に能力を発揮できない酵素が多いんです。

この図の鉄イオンのように、酵素の活性中心にミネラルやビタミンが結合してはじめて、ギューンっとフルパワーで活性化し、目的の物質を作ることができるようになります。

神経伝達物質では、たとえば、ドーパミンをノルアドレナリンに変える酵素に銅が欠かせませんし、セロトニンをメラトニンに変える酵素にはマグネシウムが必要です。

もし、ミネラル不足で酵素が活性化されず、十分な量の神経伝達物質ができないと・・・
やる気を出したり、集中したり、落ち着いたり、そういったことが、うまくいかないかもしれません。
実際、そういう人が多くなっているのではないかと、心配しているわけです。

【酵素は作れど働かず】

設計図DNAには、アミノ酸の種類と順番しか書かれていません。

「この酵素の、この部分に鉄をくっつけて」なんて、書いてないんですよ。
ということは、どうやって鉄が結合したのかというと・・・

生体内で、ある酵素がつくられた後、
「たまたま鉄イオンがピッタリ合った」
「その鉄イオンは、たまたま近くにいた」
ということ、みたいなんです。

「マグネシウムが結合すべき酵素の近くには、マグネシウムが存在している。」
これが、生物本来の状態なんでしょうね。

野生生物には、ミネラル不足はありません。だって、ライオンはシマウマの肉をゆでませんし、鳥は玄米を精米して食べたりしませんから。

飢餓はあります。
でも、ミネラルは、食べ物の消化にたくさん使われます。飢餓で食べられないときは、餓死することはあっても、
何かを食べて生きてる状態で、ミネラル不足になることは、野生動物ではありえないと思います。
食べ物の消化に使われるミネラルは、食べ物そのものに含まれているはずですし・・・

では、現代の日本人の食事はどうか?ミネラルが、食べ物から抜かれています。

カロリーは十分なのに、それを消化するのに使うミネラルが不足しているなんて、地球の生物史上はじめての出来事かもしれません。ミネラルが減っているだけでなく、重合リン酸塩で吸収も悪くしているのですから、酵素の近くに漂っている各種ミネラルが、ずいぶん少なくなっているはずですよね。

酵素はいっぱい作られていても、ミネラル不足で活性化していない状態でしょう。

【ミネラルサプリメントは?】

そんなにミネラル不足なら、サプリメントで補ってはどうでしょうか?

このゼリーは、たった5種類しか入っていません。少なくとも43種類は必須と考えられているのに。
参考資料
しかも、重合リン酸塩入りだし、低カロリー実現のため、人工甘味料も使用しています。

これも10種類しか入っていませんね。

貧血だからといって、鉄だけ補うと・・・
過剰摂取が心配だし、相互作用が心配です。

相互作用とは?
・マグネシウムよりカルシウムを何倍も多く摂るとかえって骨のカルシウム量を減少させる
・リンの過剰摂取は、カルシウムだけでなくマグネシウムの吸収を阻害する
・カルシウムの過剰摂取は、マグネシウムや亜鉛、鉄の吸収を阻害する
・亜鉛の過剰摂取は、鉄や銅の吸収を阻害する
・鉄や銅の過剰摂取は、亜鉛の吸収を阻害する
・銅が不足すると鉄不足になる
・銅はモリブデンの過剰摂取で排出されやすい
だから、サプリメントでミネラルを摂ると、バランスを崩してしまう恐れがあるんです。

幅広い食べ物をバランスよく食べること。ミネラル豊富な食事にすることが大切です。
食材からミネラルを摂るようにすれば、あまり研究されていない微量ミネラルも一緒に摂れますから。

医療機関で、治療でサプリメントを使うのはいいことだと思うんですが、一般消費者が
自分の判断でサプリメントに頼るのは危険ではないでしょうか。

「私はプルーンから鉄分を補ってるの!」と言って、こういうヨーグルトを飲んでも、プルーン由来の鉄分は、わずか「0.15%」で、ほとんど添加物のクエン酸鉄アンモニウム由来。これも、一種のサプリメントなんですよね。

【どうすればいいの?】

加工食品の重合リン酸塩を避けようと思っても、重合リン酸塩と正リン酸塩が区別されていないことが多いし、そもそも「リン酸塩」とは表示されないことが多いんですよね。

例えば、サンドイッチを作るとき、食パンの「イーストフード」にリン酸塩、スライスチーズの「乳化剤」にリン酸塩、ハムの「pH調整剤」にリン酸塩・・・で、これらのリン酸塩に重合リン酸塩が含まれている可能性が高いわけです。
参考資料

加工食品を利用する以上、リン酸塩を避けきれませんから、困ったものです。

ただし、重合リン酸塩は毒ではないので、重合リン酸塩に奪われても「あまる」ほどミネラル豊富にすればいいわけです!

全粒粉入りのパンにしてもいいし、ゴマ、煮干し粉、海苔、ナッツ類、種実類、豆腐などの大豆製品もいいですね。
「合う」「合わない」は別として、こういうものをトッピングすれば重合リン酸塩は怖くありません。

それと、もう一つ、裏技があります。
重合リン酸とミネラルが結合した状態は、腸から吸収されにくいんですが、アミノ酸や有機酸とミネラルが結合した状態は、吸収されやすいんです。

有機酸というのは、みかんのクエン酸や、野菜のビタミンCや、ぶどうのリンゴ酸や、漬物の乳酸や、お酢の酢酸などです。

食卓に酢の物を一品添えたり、食後にフルーツを食べたりして、重合リン酸塩からミネラルを奪い返しましょう。